開花の瞬間は、何度でも訪れる

開花、という言葉について。「ひと花咲かせる」「才能が開花する」「念ずれば花ひらく」など、花が咲く瞬間はしばしばドラマティックなものとして語られる。そもそも開花には春が似合う。厳しい冬を越えた先にある、暖かな光の季節。長い下積みの時期を経て、ここぞというタイミングで成功をおさめたり、生まれ持った才能が突然脚光を浴びたり──開花という言葉は、そんな華やかな光景にふさわしいと、つい考えてしまう。
自分の人生を振り返ってみると、あのときが開花のタイミングだったな! と言い切れる、唯一無二の場面はほとんどない。むしろ、そんな局面を期待するほど空回りしてしまうことのほうが多かったように思う。
だからといって、冴えなくてつまらない平坦な人生だったのかというと、まったくそうではない。振り返ると歩いてきた道のあちこちに、さまざまな花が咲いている。
たとえば仕事のこと。私は、いわゆる就職・転職活動で成功した試しがない。肩に力が入り面接ではいつも失敗する。採用が確定していたのに、やっぱり雇えませんと断られたこともある。そのたび焦り、落ち込む。けれど、不思議とそのあとに手を差し伸べてくれる人が現れる。その波に「面白そう!」と乗っていくと、思いがけず道が開けていくのだ。そうして辿り着いた場所での仕事は、多くの開花につながる、かけがえのない経験をくれた。
あるいは子育てのこと。シングルマザーとして、自分ひとりですべてを抱えているように感じ、余裕がない日々を過ごしていた。しかし気づけば息子は10歳になり、私のことをずいぶん助けてくれるようになっていた。そしてそんなふうに息子が成長できたのは、私がひとりで頑張っていたからではもちろんない。両親や友人たちが手を差し伸べ、私と息子をしっかりと支えてくれていたからだということに、ふと思い至る。他者の助けがあってこそ咲く花もある。
種まきから開花までの時間もいろいろだ。学生時代に夢中になっていた映画や音楽、小説、アートやカルチャーの世界に、いま仕事で助けられることがとても多い。当時はただ好きで掘り下げていたものが、時を経て別の意味を成し、新たな世界へといざなってくれる。
人生における開花とは、自分の気持ちが報われる瞬間を指すのではないだろうか。長年の夢が叶うといった大きな出来事もあれば、誰かと笑い合って心が軽くなるような、ささやかな一瞬もある。花は一生のなかで、いくつでも、何種類でも咲いていく。ただ、自分がどんな花を咲かせていくか、あらかじめ知ることはできないだけだ。だから、心がときめくほうへ、経験を積み重ねたいほうへ、美意識に沿うほうへ。直感や感性を大切にしながら、自分らしく進んでいけばいい。頑張っているのに一向に咲かないと感じる日もあるかもしれない。それはきっと、違った形の開花が控えているサインなのだと思う。だから安心して大丈夫。未来から見たら、この現在地にもきっとたくさんの花が咲いている。

TIME TO BLOOM
自分という花を、咲かせよう。
「TIME TO BLOOM ── 花ひらくとき。」をテーマに、転機をとらえ、チャンスに変えてきた女性たちのインタビューを発信。3月8日の「国際女性デー」に向けて、2026年春発売予定の限定品「Spring Note Mimosa」や、さまざまなアクションをお届けします。SEE/SAWとポジティブな春を迎えましょう。

Art Flower_Mimosa