(STORY)

PEOPLE

自分の感覚を大切に
面白そうなほうへ行ってみる

NAZUNA プロップスタイリスト/セットデザイナー

自分という花を、咲かせよう。
TIME TO BLOOM ── 花ひらくとき。思いがけない瞬間に、人生の転機はやってきます。日常の会話に潜む何気ないひとこと。ふらりと入ってみた路地裏での出会い。自分の思いをノートに綴る時間。希望の扉がそっと開くきっかけは、きっとそこかしこに隠れている。転機をとらえ、チャンスに変えてきた3人の女性に訊いた、これまでのこと。そこには、自分らしい花を咲かせるヒントがたくさん詰まっていました。

NAZUNA(プロップスタイリスト/セットデザイナー )
桑沢デザイン研究所卒業後、ファッション誌の編集アシスタントに。ロンドンのセットデザイナーの作風に魅力を感じ、渡英。アシスタントを経験しロンドンと東京でセットデザイナーとしての経験を積む。現在はロンドンを拠点に活動中。素材やディテールにこだわったプロップ製作、ストーリーを意識したスタイリング提案が支持を集めている。
@nazzzzna

オブジェや小道具を使ってユニークな空間を作り上げる。

INTERVIEW

オブジェや小道具を使ってユニークな空間を作り上げ、ファッションメディアや広告ビジュアルに忘れられない余韻を残すNAZUNAさん。彼女はこのプロップスタイリストという仕事を、道なき道を進むことで手にしてきた。

高校で美術を専攻し、桑沢デザイン研究所へ進学。在学中に海外ファッション誌で目にした撮影用の小道具を製作したりスタイリングするセットデザイナーの仕事に興味を持つが、当時どうキャリアをスタートしていいか分からなかった。「そんなとき、愛読していたファッション誌でインターンとして採用されて。セットデザインをやりたいと話したら、欧米ではプロップスタイリストという名前で活躍している人が多いと当時の編集長に教えていただいたんです」。その後、周りの渡英経験のあるヘアメイクさんなどに情報共有してもらい、たびたびロンドンへ。憧れのプロップスタイリストにコンタクトを取ってアシスタントについたり、人脈を作ったり。日本でも実績を積み重ねて、今の2拠点で活動するスタイルが作られた。

NAZUNAさんは「どうなるかわからなくても、とりあえずやってみるべき」と言う。彼女はいつも自分からアクションを起こす。熱意の向く方に進めば、いつか道が開けるのだ。「私の仕事はニッチで “こうすればなれる”という道が用意されていたわけではなかったから。でも、自分にとって面白そうなことに敏感に、フットワーク軽く動くことで、わかっていくことがたくさんあります。現場にしかないハプニングや、感動や、ときには失敗も、全部糧になる。流行や評価を気にするより、自分の心が喜ぶことに忠実であることが大事だと思います」。現在の拠点はロンドン。「生活はやっぱり日本のほうが落ち着くので恋しくなりますが、クリエイティブの面では良い刺激になる場所。これからは撮影セットを作る以外にも、意外性のある素材を用いたオブジェ製作など、制作の幅も広げていきたいです」。



プロップスタイリスト志望の若い人から相談を受けることもあるが、確実に仕事にするための正解ルートはないとNAZUNAさんは言う。「いろんな人と会って、自分のフィットする環境を見つけ、実践しながら技術や表現を磨くことをおすすめしたい」


ハードな撮影が続いたら、睡眠や食事に気をつけてコンディションを整えることを大切にしている。「いい映画、アート、本に触れること、クリエイティブな友人に会うこと。これらは全部、自分らしい感動やインスピレーションにつながっていると思う」


WEB LIMITED
NAZUNAさんに聞く、7つの質問

Q.1
今、お仕事のほかに没頭しているものは?

A.
いまは撮影で使った背景紙を再利用して紙漉きでオブジェを作るのにハマっています。少し前まで東京にいた頃は型のなかにガラスの粉を入れて焼成する、パート・ド・ヴェールという技法が実践できるガラス教室に通っていました。手を動かして感覚で物を作ったりアレンジすることが大好きです。

Q.2
お仕事に対してやりがいを感じるのはどんなときですか?

A.
「いい画ができたな」と実感する瞬間です。フォトグラファーをはじめ、現場のスタッフのみんなのケミストリーで作り上げたものが上手くいったときは、それがクライアントにも伝わって、喜んでいただけることが多いです。

Q.3
ご自身のセンス・作風の根源にはどのようなものがあると思いますか。

A.
これまでに見てきた展示や映画などの影響が大きいと思います。幼い頃は特にシュールレアリズムが好きでした。今でも日常の中に非現実的なものを感じさせるような見せ方をスタイリングに取り入れるのが好きかもしれません。また東京で育ったので、いろいろなカルチャーが雑多に混ざり合う感じと、欧米の方の表現に比べて日本特有の間の感覚みたいなものは持っているのかなと思います。

Q.4
日々の中で気持ちを整える方法について教えてください。

A.
散歩やジャーナリングです。思いついたことや、やりたいことをとりあえずノートにメモするという習慣がずっと続いてます。5年前のノートなんかを見ると、今と全然違うことを考えてたりして興味深いです。

Q.5
仕事をする上での必需品。

A.
歩きやすい靴。スタジオではは立ちっぱなし・動きっぱなしなので、足がすごく疲れるんですよ。特にお気に入りなのが〈サロモン〉のスライドサンダル。運動後に履くためのシューズで、脱ぎ履きしやすく歩きやすいんです。

Q.6
NAZUNAさんがこれから挑戦したいことは?

A.
プロップの素材やテクスチャーにフォーカスした表現にトライしてみたいです。いろいろなものを画面で見る機会が多くなってしまって、手触りだったりリアルな質感みたいなものを自分自身が求めているからです。

Q.7
これから何かを始めようとしている女性たちへ、どんな言葉を届けたいですか?

A.
キャリアのスタート時は正解がわからず大変なこともありますが、常に学ぶ気持ちを忘れずベストを尽くしていけば、必ず何かしら道は開けると思います。また自分の周りの友人たちでも、「こうなりたい」「これをやりたい」と10年前に声に出して周りに伝えていた人は、それを実現している人がとても多いです。好奇心を大事に、まずは小さいことからでも始めてみて、継続すれば結果がついてくるはずです。


TIME TO BLOOM
自分という花を、咲かせよう。

「TIME TO BLOOM ── 花ひらくとき。」をテーマに、転機をとらえ、チャンスに変えてきた女性たちのインタビューを発信。3月8日の「国際女性デー」に向けて、2026年春発売予定の限定品「Spring Note Mimosa」や、さまざまなアクションをお届けします。SEE/SAWとポジティブな春を迎えましょう。

Interview&Text_Ayana (Beauty Writer)
Photo_Ayaka Endo